最高裁判所第三小法廷 昭和26(れ)268 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人村上信金の上告趣意は末尾添附別紙記載のとおりである。
論旨第一点について。
被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができない場合であつて
も、刑法上にいわゆる強制弁護の場合を除いては、被告人からその選任の請求がな
い限り、裁判所は積極的に弁護人を附する必要がなく、この点に関する刑訴応急措
置法四条の規定が憲法三七条三項に違反しないことは当裁判所の判例とするところ
である(昭和二四年(れ)第六八七号同年一一月二日大法廷判決)。ところで、被
告人が原審において弁護人選任の請求をなしたと認むべき形跡は記録上全然認める
ことはできない。弁護人は、被告人が公判期日に弁護人を附していないときは、そ
のこと自体黙示の弁護人選任の請求があつたものと認むべきであると主張するので
あるが、かく解すべき理論上の根拠もない。又かかる場合裁判所が被告人に対し、
弁護人を附するか否かについて釈明を求めねばならない義務もない(昭和二四年(
れ)第二三八号同年一一月三〇日大法廷判決参照)。してみれば、原審が被告人に
弁護人を附さないで弁論を終結し判決したことは何等違法でないから論旨は理由が
ない。
同第二点について。
原審の第一回公判調書によると、原審は、第一審第一回公判調書記載の各書類を
証拠調した旨の記載があるが(記録二二九丁)これは、単に同調書に列記した各書
類を各別に羅列する煩を避けるためその記載を簡略にしたものに過ぎない。そして
第一審第一回公判調書には原判決挙示の各証拠書類が列記してあるから、これらの
証拠書類について証拠調がなされたこと明らかである。
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よつて原判決には所論の如き違法はなく論旨は理由がない。
右の理由により旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見を以て主文のとおり
判決する。
検察官 田中巳代治関与
昭和二六年五月二二日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
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